30周年を迎えるFSC、世界中で見られるFSCⓇ森林認証の新たな取り組み

30周年を迎えるFSC、世界中で見られるFSCⓇ森林認証の新たな取り組みSDGs

日本は国土の3分の2を森林が占めている森林大国で、昔から様々なかたちで木々を保護するための取り組みが行われています。

2025年7月にはソフトバンクが企業版のふるさと納税制度を活用した「日本森林再生応援プロジェクト」などの取り組みを始めるなど、近年では自治体や企業による森林資源の保全活動も多く見られています。

そんな森林資源を持続可能な範囲で活用するための認証制度、FSC認証を運用する国際機関のFSC(森林管理協議会)が2024年に発足30周年を迎えました。

そこで今回はここ一年間での国内外のFSC認証に関する取り組みを紹介いたします。

FSC認証制度がどんな制度なのかまずはおさらい

FSC認証は森林保全の活動を支援する世界的な非政府組織であるFSC(森林管理協議会)が、森林資源やその資源を利用した加工製品を評価して認証する環境ラベリング制度です。

FSC認証には違法伐採や密猟、児童労働などのない適切に管理された森林資源を認証するFM認証と、認証を得た木材を使い環境に配慮した方法で製造加工された製品を認証するCoC認証の2種類があります。

2024年時点で世界84の国で1.6億ヘクタールもの森林が認証を受けていて、これは日本の4倍以上にもなる面積です。

日本でも北海道から九州にいたるまで全国各地にFSC認証を受けた森林があり、日用品や食料品のパッケージにFSC認証が貼られたものも増えています。

FSC認証制度に関する国内外の6つの取り組み事例

① 三陸の被災地の森林資源が自然共生サイトに認定

町の面積の7割を森林が占めている宮城県南三陸町は、伊達政宗公の時代以降、良質な杉の産地として古くから林業が盛んに行われていました。

宮城県初のFSC認証森林である南三陸町の「南三陸FSC認証林」は、2024年に環境省が認定する「自然共生サイト」として認定されました。

自然共済サイトは「30by30」と呼ばれる生物多様性保全のための目標を達成すべく、民間の取り組みなどにより生態系が保全されている森林を環境省が表彰する制度です。

東日本大震災の津波により南三陸町の市街地は大損害を受けましたが、杉や赤松などの生い茂る山林は被害を免れそのまま残りました。

その後持続可能な林業による復興の取り組みが評価されて2015年にFSC認証を取得、2017年には公共施設としては国内初のFSC認証を取得した町役場がつくられました。

ほかにも南三陸町は水産資源でも国際的な環境認証を取得しており、町全体で自然との共生による持続可能な復興に取り組んでいます。[注1]

 

② 台湾の全ての国有林がFSC認証を取得

2024年12月、台湾政府は当局が管理するすべての国有林がFSC認証を取得するというアジア初の成果を成し遂げました。

日本の農林水産省にあたる台湾農業部では、森林保護以外にも木材の自給率向上や木材輸送のCO2削減などの観点から2018年から国有林のFSC認証の取得を促進してきました。

これにより最終的に台湾の森林全体の約71.5%にあたる約160万ヘクタールもの国有林がFSC認証を取得し、国内でFSC認証材を使用した製品が流通するようになりました。

当局は国産の木材を利用した製品の使用を奨励しており、例えば公立学校に対して国産の木材からつくられた机や椅子を積極的に使うよう推進しています。

こうしたFSC認証取得による社会の動きは、林業をはじめとする地域産業の活性化や山間部の地域文化の保護などにもつながると期待されています。[注2]

 

③ 世界初のFSC認証を受けた自転車レース用タイヤ

2024年7月、イタリアのタイヤメーカー・ピレリ社が世界初のFSC認証を得たレーシングバイク用の自転車タイヤ「P ZERO™ Race RS」を開発しました。

タイヤの主原料である天然ゴムは熱帯雨林を切り開いて栽培されることが多く、森林破壊や生態系への悪影響がかねてから問題視されていました。

この製品に使用されている天然ゴムの23%が持続可能な方法により生産されたもので、タイヤの側面にはFSC認証のロゴマークが表示されています。

実際の自転車レースでも公式タイヤとしても使用されており、現在では世界中で購入できるようになっています。

ちなみに2025年現在、F1グランプリではすべてのチームのレーシングカーでピレリ社のFSC認証を取得したタイヤが用いられています。

ピレリ社の製品は高い品質と環境への配慮を両立できることを表している事例といえるでしょう。[注3]

 

④ FSC認証を取得したコレクションがファッションショーに出展

2024年10月、香港のファッションイベントにおいて、世界初となるFSC認証を得たカプセルコレクション「FSC x V.VISSIコレクション」が出展されました。

カプセルコレクションとはブランドの世界観やテーマを表現した少量限定で展開されるファッションアイテムのことで、FSC x V.VISSIコレクションはファッション業界と森林資源の持続可能性が両立できることをテーマにしています。

ファッションアイテムに使われるレーヨンやビスコースなどの再生繊維は、原料の約50%が違法伐採などにより調達されたものを使っているとされており、このカプセルコレクションは製造過程全体でFSC認証を得た原料のみを採用しています。

香港でのイベントに出展した後、パリや上海のファッションイベントにもカプセルコレクションが展示され、多くのファッション関係者の注目をあびました。

FSCでは大量生産・大量消費にかわる持続可能なファッション産業の実現を目指す「Fashion Forever Green Pact」を行っており、今回のカプセルコレクションもその一環として企画されたものです。[注4]

 

⑤ FSC認証取得の絶滅危惧種の生物への好影響が明らかに

2024年4月、科学雑誌のネイチャーにFSC認証が希少な野生生物の保護によい影響を与えているという研究結果が掲載されました。

これはオランダにあるユトレヒト大学の研究者などからなるチームが2018年からの3年間にアフリカの赤道地帯で行った調査で、カメラトラップと呼ばれる機材で撮影した130万枚の写真から現地の哺乳類の生態を調べるというものです。

FSC認証を受けた森林7か所と受けていない森林7か所にそれぞれカメラを設置して調べた結果、認証を取得した森林のほうがマルミミゾウやニシローランドゴリラなどの絶滅危惧種を始めとした生物を多く見ることができました。

また調査の結果、認証を受けた森林のほうが人間による狩猟の痕跡が見られず、密猟の被害に遭いやすい大型の野生生物が生存しやすい環境であることもわかりました。[注5]

 

⑥ スマートフォン初のFSC認証取得製品の登場

スマートフォンの開発・製造を行うモトローラは、2025年4月に世界初となるFSC認証を取得した木材を使用したスマートフォン「Motorola Razr 60 Ultra」のリリースを発表しました。

同モデルには4種類のカラーバリエーションがあり、そのうちの「PANTONE Mountain Trail」という種類にFSC認証を取得した木材が使用されています。

モトローラ社は長年環境にやさしいモデルの研究開発を積極的に行っており、製品を利用した時の消費電力の削減などを実現させてきました。

この他にもカーボンオフセットを行った部品を導入したり、梱包用品を再生パルプを使ったものを取り入れたりと、同社では環境に配慮した動きがみられています。[注6]

 

FSC認証に関する森林を守る動きは世界中で見られている

コムデザでは過去にもFSC認証を取得した製品をいくつか取り上げましたが、今回あらためて様々な分野にFSC認証の製品がでてきていることがわかりました。

FSC認証を取得することは、森林だけでなくそこに住む動植物やそこで暮らす人々の社会を守ることにもつながります。

あらゆるものの「持続可能性」の保全を支援するあかしともいえるFSC認証、今後もさまざまな認証取得製品がうまれるといいですね。

 

・関連資料のリンク

[注1] 南三陸森林管理協議会|宮城県初のFSC認証を取得
[注2] 森林永續經營新扉頁 國有林全區FSC驗證 森林驗證比例亞洲最高
[注3] FSCPIRELLI LAUNCHES THE FIRST MOUNTAIN BIKE TYRES MADE IN ITALY WITH FSC™ CERTIFIED NATURAL RUBBER*
[注4] First FSC-Certified Capsule Collection Unveiled at CENTRESTAGE
[注5] FSC-certified forest management benefits large mammals compared to non-FSC
[注6] Specifications – motorola razr 60 ultra

 

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