印刷の良し悪しを左右する「網点」と「モアレ」

印刷の良し悪しを左右する「網点」と「モアレ」アート・クリエイティブ

皆さんは印刷の基本的な仕組みについて、考えたことはありますか。

印刷であらゆる色を変幻自在に再現するためには、網点の活躍が欠かせません。

しかし網点をうまく管理できていないと「モアレ」と呼ばれる現象を引き起こすことになります。

今回は印刷に関する知識として、網点とモアレについて紹介いたします。

「網点」は印刷の仕上がりを左右する大事なもの

網点は印刷において色彩や濃淡の表現に用いられる小さな点です。

モノクロの漫画のページを拡大して見ると小さな黒い点が等間隔で並んでいますが、これは網点を用いた画材であるトーンが使われているため。

下の新聞の見出しも、寄ってみると網点がびっしり並んでいることがわかります。

新聞の見出し新聞の見出しの網点

網点の大きさを調節しながら印刷することで、黒色100%のインキでも様々な白黒のコントラストやグラデーションを表現できるようになっています。

またフルカラー印刷の場合、CMYK(シアン(青)・マゼンダ(赤)・イエロー・ブラック)の四色の網点を上手に組み合わせることで、印刷時に多様な色が表現できるようになっています。

シアンとイエローの網点を重ねて黄緑色を出したり、マゼンダとブラックの網点を重ねて紫色を出したり。

絵の具の量を調節しながら混ぜ合わせて色を作る行程が何となく思い浮かびそうです。

ちなみに網点は「もうてん」と読んでしまいそうですが、正しくは「あみてん」なので間違えないようにしましょう。

網点はなぜ印刷で用いられている?

印刷の際に網点が使われている理由として、一つに黒色100%もしくはCMYK100%の印刷インキを調節することで網点の大きさを変えて様々な色やグラデーションが表現できることが挙げられます。

さらにデジタル原稿を印刷する際には必ずラスターデータという形式に変換してから印刷機械に送られるのですが、この一連の行程も網点が大きくかかわっています。

パソコンで制作された文章や図表は、数式により構成されるベクターデータという形式で保存されることで後から自由に編集しやすいようになっています。

しかし印刷時にはデータの数式を正しく参照できないため、RIP(ラスター・イメージ・プロセッサー)と呼ばれる処理システムを通してラスターデータに変換します。

ラスターデータは原稿データを画像として変換処理されたもので、文字や図形などのデータを無数の網点の集合体として出力側に伝えます。

CMYKの4色の網点の組み合わせ方も、RIPによる処理の際に行われます。

網点の密度で印刷の仕上がりが大きく変わる

印刷物の仕上がりはその網点の密度によって大きく変わります。

網点の数がまばらだと印刷の仕上がりが粗くなってしまい、元の画像との再現性も低くなります。

網点を線状に見たときの1インチあたりに存在する網点の密度を表す「網線数(スクリーン線数)」という単位があります。

印刷物の種類や用途などによっても変わりますが、一般的な商業印刷の網線数は175線ほどです。

網線数の値が大きいほど網点も多くなるので、よりきめ細やかな仕上がりで印刷できるようになります。

例えば弊社の高精細印刷では280線以上の網線数を用いて印刷することで、通常よりも実物の美しさを印刷でより鮮明に表現できるようになっています。

しかし網線数が多くなるほど、色の濃淡のコントロールなどが難しくなるため高度な管理技術が必要となります。

「モアレ」は網点の重なりで生まれる現象

モアレとは規則正しく並べられた網点が重なることで、互いに干渉しあい発生する波紋のようなものです。

身近な例でいうとスマホでテレビ画面を撮影すると、画面の一部に放射状や縞状などに波打った模様が現れることがあります。

これもテレビ画面とスマホ画面で用いられる画素が干渉しあって、ありもしない模様がモアレとして浮かび上がるのです。

定期健診の項目に「モアレ検査」というものがありますが、これも背中を撮影したモノクロ写真に浮かび上がる縞状の模様(モアレ)を見て、異変はないか検査するものです。

フルカラー印刷の場合、CMYKと4種類の網点を組み合わせて色を表示させるため、それぞれの版の傾きやズレによってモアレが発生しやすいです。

そのためCMYKの各版はモアレが一番目立たないとされる角度に配置されて使われており、イエローを除く3色のうちいずれかを45度の位置に、残りの2色を15度か75度の位置に置いて、イエローを30度あるいは60度の位置に置くというのが伝統的な配置例だといわれています。

モアレの原因としてよく挙がるもの

① 幾何学的な柄と網点の干渉

格子柄や水玉模様といった幾何学的な模様を取り入れたネクタイやシャツなどの服装は、印刷時に柄と網点が干渉してモアレの原因となることがあります。

また橋の欄干など等間隔に細長いものが並んだ形状のものも網点と干渉してモアレが起きやすいです。

② 網点のアンチエイリアス

アンチエイリアスは画像の輪郭がなめらかになるようにグラデーションをかけることで、一般的にジャギーと呼ばれる線のギザギザを無くすために使われます。

トーンなど網点の入った画像データを拡大・縮小して変形すれば、網線の周囲に灰色のアンチエイリアスが発生します。

アンチエイリアスの部分は印刷する際に白色か黒色に2階調化されますが、この際に網点の形がいびつな円形となってモアレの原因になりやすくなります。

③ 画像のスキャン

写真やイラストなどの画像をスキャンする際、画像の網点とスキャナー側の画素が干渉してしまいモアレが生じることがあります。

そのためスキャナーによっては、モアレの発生を防止する機能が備わっているものもあります。

モアレ発生を防止する方法

① モアレが出ない角度に版をそろえる

版を置く角度が正しくないとズレによってモアレが生じる可能性が高くなります。

反対に30度や45度などの決まった定位置にきちんと版を揃えて置くことでモアレの発生は抑えられます。

これだけでモアレの発生確率は大幅に下がります。

② 画像データのぼかし加工

PhotoShopなどの編集ソフトを使ってモアレが発生しそうな部分をぼかし加工することで、モアレの発生を防ぐことができます。

ただし画像の一部または全体がぼやけてしまうため、画像をくっきりはっきり見せたい場合には適していません。

③ FMスクリーンによる印刷

網点の並べ方には規則正しく線状に並べる「AMスクリーン」と、ランダムな位置に配置する「FMスクリーン」の2種類があります。

AMスクリーンに比べてFMスクリーンは、網点同士の干渉が起きにくいためモアレの発生をおさえられます。

ただし網点の位置がランダムとなるため、印刷したときに場所によって色彩の仕上がりにバラつきが出やすくなります。

まとめ

網点の位置に気を付けていればモアレは起こらない

原稿や画像といったデジタルデータを印刷するためには、RIP処理によってラスターデータに変換する必要があります。

その後、黒色もしくはCMYKの印刷インキで網点と呼ばれる小さな点を生成することで、あらゆる色やグラデーションなどを再現することができます。

網点の密度が高いほどより鮮明な印刷が可能になりますが、その分細かく色を調節しなければならず熟練した技能が必要となります。

また網点同士が干渉しあうことでモアレと呼ばれる模様が生じやすくなります。

モアレを目立たなくするため、印刷業界ではそれぞれの版の角度を変えて配置した状態で印刷しています。

ただしトーンの変形や写真素材のスキャンなどによって、モアレが思わない形で目立ってしまうこともあるので気を付けましょう。

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