少子高齢化の進む日本、65歳以上のいわゆるシニア世代の人口は3,600万人を超えており国民全体の3割ほどに達しています。
このためシニア世代の市場規模も年々拡大し続けており、アパレル製品や文房具など様々な業界でシニア向けの製品やサービスが展開されています。
そこで重要になるのがシニア世代の関心を集めるマーケティング施策。今回は中でもシニア世代をターゲットにしたWEBマーケティングについて紹介します。
シニア世代の過半数がネットを日常的に使っている
2023年に総務省が行った通信利用動向調査によると、65歳以上のインターネット利用率(過去1年にネットを利用したことのある割合)は60.9%、60代だけで見ると90.2%にものぼっています。
また同調査では65歳以上のスマホ所有率が62.2%と、シニア世代の半数以上がネットやスマホを生活で利用していることがわかります。
シニア世代がネットを利用する用途のひとつに情報収集やネットショッピングがあげられ、実際にシニア世代向けに制作されたランディングページも少なくありません。
シニア向けの製品やサービスをネットで販売するとき、競合製品を売っている他社ではなく自社のECサイトに来てもらうためのWEBマーケティングの施策が重要になります。
ここからはシニア世代に焦点を当てたWEBマーケティングについて詳しく見ていきます。
シニア世代に焦点を当てたWEBマーケティングのかたち
響きやすいテーマを取り入れたWEBコンテンツ
シニア世代の関心をひきやすいテーマで、ブログや動画などのWEBコンテンツを運用してマーケティングツールとして活用します。
主なテーマとしては料理や運動など老後の健全な暮らしに役立つものや、シニア世代と同じ年代の方のエピソードを紹介するものなどがあげられます。
コンテンツを見に来てくれたシニア世代の方のリード育成が目的なので、製品やサービスをダイレクトに売り込むような内容にする必要はありません。
シニア世代の方が自社製品に親近感や安心感を持ってくれるよう、定期的にコンテンツを更新してシニア世代が何度もコンテンツを見に来てくれる状況をつくりましょう。
検索頻度の高いキーワードにあわせた広告展開
シニア世代はGoogleなどの検索エンジンに加えて、YouTubeやInstagramなどのサイトも利用しながら情報収集することが多くなっています。
例えばYouTubeでは昭和の流行を振り返るものや病気予防のための習慣を紹介するものなど、彼らに響く内容の動画も数多く投稿されています。
そこでシニア世代が検索する頻度の高いキーワードの検索画面に効率よく表示されるよう、Google広告などのサービスでWEB広告を展開するのもおすすめです。
検索頻度の高いキーワードは、ラッコキーワードなどの外部ツールやChatGPTなどの生成AIによるサービスを利用して調べることもできます。
折込チラシやDMとのクロスメディア展開
新聞や雑誌といった出版物に親しみのあるシニア世代だからこそ、WEBマーケティングに紙媒体を併用したクロスメディアも効果的だといえます。
総務省が2023年に実施した調査では、新聞の情報源として重要だと感じる割合が全世代合計は44.3%だったのに対して60代の合計は73.7%にものぼっています。
そのため若い世代に比べてシニア世代は新聞や郵便物に接する機会が多く、折込チラシやDMの効果も出やすいと考えられます。
検索で出やすいキーワードを入れたりQRコードを記載したりすれば自然な形で自社サイトに誘導させることができます。
ただしQRコードに馴染みのない方も多いため、スキャンのやり方を必ず明記して難なくアクセスできるようにしてあげましょう。
SNSを通じたコミュニケーション展開
LINEやInstagramといったSNSを日常的に利用するシニア世代も増えています。
同世代で同じ趣味を持つ友人を見つけたり、ニュースや流行情報を知ったりとSNSは様々な用途で利用されています。
SNSの公式アカウントは、シニア世代の関心を集められる話題を提供したりシニア世代とコミュニケーションをはかることでマーケティングツールとして効果を発揮してくれます。
ただしTikTokなどのSNSは、若い世代の利用が中心なためシニア世代に向けたアプローチには適していないので注意しましょう。
シニア向けのWEBマーケティングで気を付けるべきこと
具体的なペルソナ像を設定する
シニア世代にあてはまる範囲は広く、年代によって価値観や興味を持つジャンルは異なりやすいです。
同じシニア世代の女性でも、60代の方と80代の方では生活で不安に感じることもかなり変わってきますよね。
たとえ同じ世代の方でも、健康状態や周囲との人間関係などによって興味関心のあるジャンルは違ってきます。
シニア世代に向けたWEBマーケティングを行うには、まずどんな方をメインターゲットにしたいか年齢や性別など具体的なペルソナ像を設定することが重要です。
そのためには後述する実際のシニア世代の分析が大きなカギとなります。
先入観を捨てて施策を考える
若い世代がイメージするシニア世代の人物像が、必ずしも実際のシニア世代と合致するとは限りません。
古いものにこだわるイメージだったが、調べてみると新しいものへの興味が高いことが分かったということもよくあります。
そのためシニア世代と積極的なコミュニケーションをとるといった施策により、シニア世代のリアルな意見を集めることも大事になります。
また内閣府などが公表しているシニア世代の生活に関する調査資料も、リサーチ材料として活用できますよ。
使いやすさと見やすさを重視する
シニア世代向けにブログやLPなどを作成する際は、シニア世代が難なく情報を得られるよう使いやすさと見やすさを意識することが重要です。
使いやすさの観点では、スマホの操作に慣れていない方向けに最低限のスクロールやリンククリックで目的のページに行ける導線を設けるなどの工夫があげられます。
一方でWEBコンテンツの見やすさを高めるためには、老化による視力低下だけでなく色覚の劣化などにも配慮してあげることがポイントです。
テキストのサイズを通常の1.5倍以上にしたり、可読性の高いUDフォントを設定したり、文字色と強いコントラストのある背景色を設定したりといった工夫があげられます。
また使いやすさと見やすさの両方を高める施策として、リンクボタンやチェックボタンの周囲に十分な余白を置くことで、内容の誤認やタップのミスを防ぐといったことがあげられます。
オフラインでのアプローチも続けよう
シニア世代のネット利用が増えたとはいえ、従来の紙媒体によるマーケティング施策の効果がなくなったわけではありません。
むしろ場合によっては、紙媒体によるアプローチのほうがWEBマーケティングの手法よりも良い結果が出やすいといえます。
例えば幅広いシニア世代にマーケティング施策を行う場合、ネットを利用する能力が人によって大きく異なることから誰にでも確実にアプローチをはかれる紙媒体が適しています。
他にも紙媒体のDMやチラシなら本人だけでなくまわりの家族や同居人の目にも触れるため、周囲の方にも間接的にアプローチができるといった利点があります。
このようにマーケティング施策を全てWEBで行うのではなく、場合によってオフラインの手法も使うことが重要といえます。
シニア世代をきちんと分析して行動することが大事
ネットやスマホを利用するシニア世代の方が年々増えており、シニア世代に向けてWEBマーケティングを行う企業も出てきています。
オウンドメディアの運用やSNSアカウントでの情報発信などシニア向けのWEBマーケティングには様々な形がありますが、重要なのはシニア世代の実際の人物像を少しでもペルソナに反映させることです。
そのためには彼らに対する先入観をなくして、幅広いシニア世代の中からどんな特徴のある人をターゲットにすべきかしっかり検討することが大事です。
そして彼らに問題なく利用してもらえるよう、使いやすさや見やすさを考慮したレイアウトでWEBコンテンツを整備してあげることが重要です。
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