3DCGは実物を用意しなくても本物のような臨場感を出せることから、あらゆる業界のあらゆる場面で活用されています。
特に製造業においては、開発中の製品がどのような形状になるか確認したり、いろいろ条件を変えながら大規模なシミュレーションを行ったりと3DCGは欠かせないものといえるでしょう。
3DCGは無限の可能性を秘めている一方、制作に必要なスキルや環境から高いハードルを感じてしまっている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は3DCGの制作に必要な制作ツールについて、役割やおすすめのものを中心に紹介します。
3DCG制作ツールがどういうものか軽くおさらい
キャラクターや物体、建造物などの3DCGを制作する3DCG制作ツールは、工業製品の動作実験やプロモーションなどあらゆる用途に活用されています。
3DCGの制作手順は大まかに以下の6つに分けられ、統合型の3DCG制作ツールであれば基本的にすべての手順を1本で実施できます。
一方ある手順の機能に特化した3DCG制作ツールも多く、全体的に統合型のツールを使うものの、一部の手順だけ別のツールを用いることも少なくありません。
ステップ1 モデリング
3Dモデルの形状を作成する工程で、ポリゴンを組み合わせて形状を構成する「ポリゴンモデリング」や、曲線や曲面により形状を構成する「自由曲面モデリング」、デジタルクレイという物体を粘土のように成型させる「スカルプティング」などの方法があります。
ステップ2 テクスチャリング
3Dモデルの表面に画像や模様を貼り付けて、臨場感や質感などを表現する工程です。
テクスチャマッピングとも呼ばれ、工程によっては実物で用いられる素材のきめ細やかな材質を忠実に再現できます。
ステップ3 ライティング・カメラワーク
3Dモデルへの光の当て方を調節したり、構図や画角を設定したりする工程です。
製品の見た目や第一印象、場面の雰囲気などを大きく左右させる工程といえます。
ステップ4 リギング・アニメーション
3Dモデルの可動域を設定するリギングを行い、実際にどう動かすかを設定する工程です。
手動で個別の動きをつけるキーフレームアニメーションや、規則的な動きを繰り返し自動で実行させるプロシージャルアニメーションなどの方法があります。
ステップ5 シミュレーション
3Dモデルの動かし方を調節することで物理現象をリアルに再現していく工程です。
風や水などの流体の動きや物体が破壊される動きなどを、自然に再現できます。
ステップ6 レンダリング
完成した3Dシーンを画像や動画などに変換する工程で、「レイトレーシング」や、ポリゴンをピクセルに変換しながら直接2D画像を生成する「ラスタライズ」などの方法があります。
代表的な3DCG制作ツール・10選
「Blender」
オランダのBlender Foundationが提供しているオープンソースのツールで、無料での商用利用が可能なため企業だけでなく個人事業主の間でも広く使われています。
日本国内にもユーザーが多く、解説動画やフォーラムなどで情報を調べやすいところからもBlenderは初めて3DCGに携わる人におすすめのツールといえます。
一方でCADデータの精密な再現には適していないため、製造業ではカタログ用の画像やVRの展示物など外部向けのコンテンツに用いられることが多いです。
「3ds Max」
米国のAutodesk社が提供しているツールで、ゲームや映画の大手スタジオが導入していることでも知られています。
様々なモデリング方法に対応することで、建造物や機械の複雑で緻密な形状を再現した静止画の3DCGを得意としています。
そのため3ds Maxは製造業とも相性がよく、機械の動作シミュレーションや複雑な工場設備のレイアウト図の3DCGなどに活用されています。
「Maya」
Autodesk社が提供しているツールで、アニメーションやエフェクトの機能に長けていることから映画のVFX撮影などで使われることが多いです。
機械の複雑な動作や流体の自然な動きも高品質で再現できることから、3ds Maxと並び多くの映像制作の現場で導入されています。
こうした特徴から製造業においても、設備の動作シミュレーションや操作手順のマニュアルなど様々な3DCGの作成に活用されています。
「Cinema 4D」
ドイツのMAXON社が提供しているシンプルで直感的な操作性が特徴的なツールです。
初心者でも比較的簡単にモデリングができることから、多くの業界で広告やARコンテンツなどの制作に使われています。
モーショングラフィックスを得意としていることから、テキストや図形を挿入して説明するマニュアルやプロモーション用のコンテンツなどの作成に適しています。
「Shade 3D」
日本のフォーライムエイト社が提供している、長年国内で多くの企業に愛用されている実績を持つツールです。
ベジェ曲線などによる自由曲面モデリングを得意としているため、自動車など滑らかな形状を持つ製品を表現するのに適しています。
またCADデータとの互換性が高いのも特徴で、工業製品に用いられる部品の組立図などの作成にも活用されています。
「Rhinoceros 3D」
アメリカのRobert McNeel & Associates社が提供している、3Dモデリング性能に特化したツールです。
外部プラグインが充実しており、レンダリングやデータ変換といった機能をプラグインで補うことができます。
NURBS曲線を用いたモデリングでミリ単位の精密な形状を再現できるため、製造業でも機械設計のレビュー用CGの制作などに活用されています。
「ZBrush」
アメリカのPixologicが提供している、スカルプディングによるモデリングやテクスチャリングの機能に特化したツールです。
彫刻をつくるような感覚でモデリングできることから、細かい部分まで思い通りの形状に仕上がりやすいのが特徴です。
細部の表現に適した点から、製造業では工業製品に装飾などを施したデザインのレビューなどに活用されています。
「MotionBuilder」
アメリカのAutodesk社が提供している3Dキャラクター・アニメーションの制作に特化しているツールです。
実際の人の動きを3Dで再現するモーションキャプチャー機能に秀でており、ゲームや映画などの制作現場を中心に活用されています。
製造業でも機械システムの稼働や工業製品の動作などをアニメーションで再現するといった場面でMotionBuilderが導入されています。
「Houdini」
カナダのSideFX社が提供している、エフェクト機能やシミュレーションの性能に優れているツールです。
パラメータを調節することで様々な差分のアニメーションを素早く生成できるため、VFX制作の現場などで広く活用されています。
流体や爆破などのアニメーションが得意なため、製造業では工業製品の動作や耐久性などの実験シミュレーションを中心に導入されています。
「V-Ray」
チェコのChaos Software社が提供しているレンダリングツールで、他の3DCG制作ツールのプラグインとして搭載されていることが多いです。
高度なカメラワークやリアルな光の表現が可能なため、3Dモデルをより実物に近い質感で表現することができます。
高品質な3DCGを素早くレンダリングできるため、製造業でも製品のレビューやプロモーションなどに使われるCGに活用されています。
3DCG制作ツールを選ぶ上での4つのポイント
① 目的にあった性能が備わっているか
3DCG制作ツールは種類によって機能や性能が異なり、それぞれ適した使用用途も変わります。
ただ高性能というのではなく、目的にあった3DCGを制作できる機能や性能があるかどうかをきちんと確認しておきましょう。
② 動作に必要なスペックを満たしているか
3DCG制作ツールを動作させるには、それなりに性能のいいPCも必要となります。
今利用しているPCのスペックが、導入を検討しているツールの推奨環境に達しているか事前に確認しておきましょう。
③ 予算に見合った価格帯で利用できるか
Blenderのような一部の例外を除き、3DCG制作ツールの利用にはまとまった額のライセンス料金が発生します。
ツールによって買い切りかサブスクリプションか料金体系が異なってくるため、いついくら費用が発生するか見ておきましょう。
④ 問題なく使いこなせられそうか
3DCG制作ツールは機能性に優れている反面、初心者には扱いにくいと感じやすいものも少なくありません。
制作の経験がない方でも直感的に操作できるかも、ツールを比較検討するうえでは見るべきポイントといえます。
また3DCG制作ツールは外国製のものが多いため、インターフェースがきちんと日本語訳されているかや、日本語でのサポート対応が可能かなども確認しておきましょう。
3DCG制作ツールには初心者向けのものもある
3DCGの制作というと、金銭面や技術面などで何かとハードルが高そうなイメージがあるかもしれません。
しかし実際には無料で利用できる制作ツールもあり、経験のない初心者でも手頃に始めることは十分可能です。
もう少し本格的に始めたい方は、どんな用途で3DCGを活用したいかによって機能や性能を比較しながらどの3DCG制作ツールが適しているか選んでみてください。
制作ツールの中には無料のお試し期間を設けているものもあるので、気になるものがあれば試しに入れてみて操作性を確認するのもよいでしょう。
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