APL2023展から見た、広演色印刷への取り組み

APL2023展から見た、広演色印刷への取り組みアート・クリエイティブ

広演色印刷

当社ギャラリーにて開催いたしましたAPL2023展から、広演色印刷への取組についてお伝え致します。

鮮やかさが当たり前の時代にあって

オフセット印刷はCMYK4色のインキで印刷を行うアナログの表現なのですが、液晶モニターなどの画面や水彩絵画などのように鮮やかな発色の再現は案外難しいものなのです。

モニターに映されるRGBのようにビビッドな色を求められる印刷、特にオレンジやグリーンなどの再現性には限界があります。

水彩画などでは多色分版して8色、10色刷りという手法もあるのですが大変にコストと手間がかかり、仕上がりによってはそれだけのコストと手間をかけて作る価値が薄れてしまうこともあります。

近年では10色のインクを使用して表現する広色域の高性能インクジェットプリンターが普及し、美しいプリントが手軽に手に入ったりします。

また多くの人がスマートフォンやタブレットの画面で情報を取得し、撮影したきれいな画像でコミュニケーションをとったり、4K、8Kなどハイビジョンで視聴することが多くなった現在、RGBの鮮やかな画像からCMYKに変換したときの色調の変化には疑問を感じたり違和感すら抱く人が多いかもしれません。

鮮やかで高精細な画像を目にしたり、保有したりすることがスタンダードになったということなのです。

紙であることの価値

美しい画像で見たければハイエンドのカメラで撮影をしたり、アウトプットはデジタルブックでもいいのかもしれません。

今時は、わざわざ紙に落とさなくてもいいのでしょう。

しかし、紙であることの価値はまだまだあるように思われます。

手元に持っておきたいという感情、紙の手触りや美しい装丁、記録や資料としての価値など、そして何よりも印刷の美しさ。

先に触れたように、多色印刷ではコストが合わない場合、広演色印刷を採用する方法があります。

通常の4色印刷ではRGBのような鮮やかな色調の再現はできないのですが、特別に調整された広色域のプロファイルとインキを使用することで4色のインキでRGBに迫る色域の再現が可能になります。

アニメや自然の景色、絵画などに向いているため実用性も再現価値も高いです。

さらに、広演色4色では再現しきれない色域のグリーンとオレンジを追加した6色印刷の技術もあります。

色彩豊かな打ち上げ花火の写真などでは6色印刷の効果が大いに発揮されます。

打ち上げ花火を6色印刷で再現
打ち上げ花火を6色印刷で再現

鮮やかさへのトライアル

APL(アートプリントラボ)では、広演色インキを用いたトライアルをしました。

オレンジやピンクの多用されたアニメイラストから風景写真、絵画まで様々なモチーフを選んで通常の4色印刷との比較を行いました。

結果は「安易に広演色インキを採用したテストプリントは、鮮やか(派手)に仕上がりすぎてCGっぽさや偽物感が出てしまう」というものでした。

仕上がりイメージの適切な把握と、広演色インキ採用への適正モチーフの見極めに対する、経験値の蓄積が課題になると感じました。

適正を見極めるには、やはりヒアリングが大切

私たちは、通常の4色印刷でも充分に再現できるものに対して無駄に広演色印刷をお薦めすることはありません。

アーティストやお客様と十分にヒアリングを重ね、素材となる画像の美しさや臨場感が伝わるように最適な印刷方法をご提案いたします。

印刷で、紙で残して人の心を動かすことを大切にし、当社の技術でお客様の大切な作品作りに寄与できることを願っております。

関連サービス

東洋美術印刷:美術印刷「美巧彩」

タイトルとURLをコピーしました