いよいよ本格的に規制される「ステマ」の実態

いよいよ本格的に規制される「ステマ」の実態プロモーション

昨年の10月、消費者庁は景品表示法の第5条第3号に表記された「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」への規制を施行しました。[注1]

これはいわゆるステルスマーケティング、通称「ステマ」と呼ばれる広告を規制するもので、かねてより大きな社会問題となっていました。

しかしステマと呼ばれる宣伝広告は、通常のものとどのように違うのでしょうか。

今回はステマの主な種類や視聴者が嫌悪する要因を中心に解説いたします。

法規制により禁じられるようになったこと

今回の法規制では、テレビCMなどのような明確に広告だと分かるものを除き、広告を展開する際には必ず宣伝だと明記することが義務づけられました。

規制対象には競合他社の印象を悪くする目的での誹謗中傷も含まれており、違反が発覚した場合、広告主は消費者庁の措置命令に従う必要があり従わないと最大で3億円もの罰金が課せられてしまいます。

有名人など社外の人間ががステマに関わった場合、現在のところ罰則の対象となるのは依頼した企業のみで、実際にステマの広告に該当するかどうかは消費者庁がケースバイケースで判断します。

ステマにはどのようなものがある?

「ステマ」は誰が行ったかで主に以下の3つに分けることができます。

① 有名人など第三者によるステマ

今まで無名だったものやあまり人気のないものが、急にあらゆるメディアで一斉に宣伝されるということはよくあります。

これは典型的なステマのやり口で、スポンサーとつながっていることを明かさない状態で有名人などに商品をPRするよう業者が依頼するというものです。

2012年に話題となった「ペニーオークション事件」でも、複数の芸能人が実際には利用していないネットオークションのサイトで商品を購入したとブログで宣伝したことが問題となり、サイト運営者が詐欺罪などで逮捕されています。

アニメーション制作会社の事例

2019年、海外のアニメーション制作会社が手がけたある映画作品が国内で公開されました。

しかし公開してから数日後、Twitterに複数の漫画家が同じタイミングで映画を高く評価するイラストを投稿したため、彼らが制作会社から利益を得てステマに関与しているという疑惑が浮上しました。

制作会社の日本法人はステマとは否定したものの広告としての表記が抜けていたと謝罪文を公開、イラストを投稿した漫画家も謝罪のツイートを投稿する事態となりました。

② 外部の業者によるステマ

外部の業者に依頼してネット上に高評価を投稿させるのも、一般的なステマの手口のひとつです。

通販サイトで商品に対して匿名でコメントできる機能を悪用し、今もなお多くの商品へ不自然に高評価が付けられており、Amazon.comでも2020年以降、1万件近くのやらせレビューを投稿する業者が提訴されています。

また業者は大量の商品レビューを一度に投稿していくため、それぞれの投稿内容は表現的に似ていることが多く、文章の特徴や投稿したタイミングなどの情報でやらせによる投稿か判定することは難しくありません。

飲食店レビューサイトの事例

2012年、飲食店レビューサイトに大量のやらせレビューが投稿されたことが発覚して大きな問題となりました。

運用元が調査してみると、39社の業者が飲食店の依頼を受けて高評価のレビューを次々と投稿していることが発覚したため、急遽レビュアーとして会員登録する際には電話番号の認証を義務付け、評価アルゴリズムそのものを大幅に変更することとなりました。

この事件をきっかけに「ステマ」という言葉が流行語大賞にノミネートされるほど世間に知れ渡るようになりました。

③ 社内の人間によるステマ

社内の人間がネット掲示板などで自社製品への高い評価を書き込むような「サクラによるやらせ行為」も、ステマの方法として多く見られます。

会社ではなく個人が匿名や無名のアカウントで行うことが多く、閲覧者にはステマだと気づかれにくいのが特徴です。

またプライベートのアカウントで行われることが多いため、問題が発覚したとしても誰が行ったか特定するのは簡単ではありません。

こうした事態を防ぐべく、企業によってはプライベートのSNSアカウントで自社製品に言及する投稿を禁止しているところもあります。

大手電気製品メーカーの事例

2000年代初頭、PCやゲーム機器などの電気製品で知られる大手メーカーに務める複数の社員がネット上に自社製品の宣伝や他社製品への誹謗中傷、さらに自社製品への否定的な意見への攻撃的な投稿を書き込んだのではないかという疑惑が浮上しました。

これは投稿者の発信元情報がメーカー内部のものと判明したために浮上したもので、2006年にも同社の子会社の米国法人に務める社員が、身分を偽って個人ブログにて自社製品を評価したり競合他社を非難したりする投稿をしていたことが発覚しています。

ステマ発覚は業界全体のイメージダウンの可能性もある

ステマが発覚した企業には顧客を騙して宣伝したイメージがつきまとうため、企業への信頼も大きく損なわれて最悪の場合、競合他社への顧客流出による利益の喪失に繋がりかねません。

さらにSNSなどの公式アカウントが一度炎上してしまうと、何年も地道に真摯な対応を行って信頼を回復しないといけない事態になってしまいます。

もしステマを行っていたのがその業界を代表するような大企業だった場合、業界全体のイメージ悪化につながるかもしれません。

またステマで偽の評価が出回っていることが発覚すると、たとえ実際の製品が良いものであっても評価が上がりにくくなります。

ステマによる宣伝戦略は一時的な集客効果こそありますが、発覚したときの企業的な損失は計り知れないものとなるでしょう。

フェイクニュースなどが連日報道されてきた昨今では、「良いものを売る」「安く売る」と同じぐらい「誠実に売る」ことを消費者は求めています。

宣伝広告だと明確に言ったうえで製品や企業をPRする姿勢が重要だといえます。

「ステマ」と正反対の概念「ダイマ」

ステマという言葉の反対語として、ダイレクトマーケティング(ダイマ)があります。

ここでいうダイレクトマーケティングは本来の意味とは異なり、広告であることを隠さずに宣伝する手法のことを指しています。

近年はSNSで自身の趣味や好物の紹介を「ダイマ」と呼んで投稿することが多く見られます。

この現象はレビューサイトやSNSにて第三者の感想を見ながら商品購入するのが当たり前になった現代ならではのものといえます。

まとめ

長らく問題視されてきたステマにようやく司法のメスが入る

欧米ではすでに10年ほど前から法的な規制が始まっているステマですが、日本でもとうとう厳しく規制されるようになります。

かつては行列商法と呼ばれるサクラを使ったステマに近いこともまかり通っていましたが、時代とともに企業に求められる倫理観も変わってきて、嘘やごまかしをしない誠実な姿勢が必須となりました。

包み隠さずありのまま製品を宣伝すれば、ステマによる消費者の信頼喪失は起きずに済みます。

誰でも簡単に扱える上さまざまなことができる一方で生成した文章の情報が正しいか確認することも必要なので、ChatGPTが便利だからといって全ての業務を任せきりにしない心構えも大切です。

関連リンク

[注1] e-gov | 「不当景品類及び不当表示防止法」
[注2] Social Science Research Network | “Consumer Perceptions of Stealth Marketing: What Makes Consumers Disgusted?

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