シニア世代にも優しいDXってどんなもの?

シニア世代にも優しいDXってどんなもの?プロモーション

近年、エイジテックという言葉が世界的に注目を浴び始めています。エイジテックは「Age(年齢)」と「Tech(技術)」をかけ合わせた造語で、シニア世代に関連したデジタル技術を指しています。

一方でシニア世代の中には、スマートフォンやAIなどの急速な技術の発達についてこれずDXの流れに取り残されてしまっている方も少なくありません。

そこで今回はシニア世代に向けたDXの課題点や取り組むためのポイントを、具体的な国内の事例も交えて紹介します。

シニア世代のDXにおける課題点

最先端の技術や電子機器に対して馴染みがないシニア世代の方が多い点は、内閣府が行った世論調査の結果からうかがえます。

年代別にスマートフォン・タブレットの利用状況を調べたところ、50代までは80%以上の方が「よく使う」と答えたのに対し、60代は55.5%、70代にいたっては24.3%と激減しています。[注1]

こうした状況の要因として、主に以下の点が言えるでしょう。

急速な技術進化への不適応

一年経つだけでも最先端のデジタル技術はかなり変わるもの。今から一年後や二年後にはこれまでにない新たな技術やデバイスが登場するかもしれません。

時の流れをより早く感じやすいシニア世代なら、なおさら新しい物事に適応するのは困難です。

さらに新たな技術が出てくると初めて聞く語彙やカタカナ言葉もたくさん出てくるため、余計にハードルを感じてしまいます。

野村総合研究所が2021年に行った調査結果でも、「新しい技術や機器を使いこなせる自信がない」と答えた割合は世代が上がるごとに高まっています。[注2]

そのため最先端のものに馴染みのない方でもすぐ利用できるよう、できるだけシンプルで感覚的に使える仕組みにすることが重要です。

 

ニーズにあった機器や機能の不足

シニア世代がデジタル機器に対して「利用したい、利用しないといけない」と感じることが少ないのもDXにおける課題点といえるでしょう。

先ほど挙げた内閣府の世論調査の結果では、70代でスマートフォンやタブレットを所持していない方でその理由を「持つ必要が感じられないから」と答えた方は52%にものぼっています。[注1]

またデジタル化やDXという言葉は知っているものの、具体的に何がどう変わるのか身近な実例を知らないという人も少なくありません。

使い方を覚えたり機材を揃えたりしてまで、最新の技術やデバイスを利用するメリットをまだ感じていないことも考えられます。

シニア世代の日常生活における不便なことへの解決策や願望をかなえる方法を、デジタル技術でどう実現させられるかも鍵といえるでしょう。

 

セキュリティ上の不安

フィッシング詐欺や個人情報の漏洩などのネットのトラブルに関するニュースも、シニア世代がデジタル技術に対して消極的に感じやすい要因といえます。

NRI社会情報システムの調査では社会のDXに期待できない理由として回答者の大半が「個人情報漏洩のリスクが高くなると思う」と答えています。[注3]

リスクが高くなる原因にハッキングによるパスワードの流出やコンピュータウイルスの感染など様々なことが挙げられるのも、DXを不安に感じる理由かもしれません。

シニア世代はこれまで生きてきた中で、特殊詐欺や悪徳商法など様々な手口の犯罪を目の当たりにしてきています。

最新の技術がどれほどプライバシー保護やセキュリティ強化に優れているか、分かりやすく伝えることもシニア世代のDXには大切です。

 

シニア世代のDXを進めるポイント

シニア世代にデジタル技術を普及させるためのポイントとして、課題点からうかがえる点を二つ紹介します。

分かりやすい表現を用いた説明

シニア世代の日常生活においてデジタル技術がどう役立つのか分かりやすく伝えることが重要です。シニア世代にとって馴染みのないカタカナ用語などは避け、誰にでも理解できるような言葉で説明できれば最適です。

例えばシニア世代でにぎわう巣鴨のマクドナルドではポテトを「おいも」、ナゲットを「からあげ」と彼らにもイメージしやすい表記を用いています。こうして言い換えるだけでもシニア世代にはとっつきやすくなるでしょう。

しかし技術の進歩により、ストリーミング再生やクラウドネットワークのように簡単にほかの表現で言い換えられない物事もたくさん生まれています。

こうした場合、クラウドネットワークは「集団で共有して利用できる仮想の倉庫」というように実際にあるものでたとえて説明してみてもよいでしょう。

どんなものかがある程度理解してもらえれば、仕組みや使い方を覚えてもらうハードルもぐんと低くなりますよ。

 

ペルソナにあわせたコンテンツ整備

革新的なデジタル技術があることも重要ですが、同じぐらいその技術でシニア世代に何ができるかも重要です。

そのためにはシニア世代が日常生活の中で感じるストレスや願望などをしっかり汲み取って、実際の人物像に近いペルソナを設けてどこに需要がありそうか調べるのが効果的。

例えばある調査ではシニア世代が難しく感じる動作として、階段の上り下りや深い睡眠などが挙げられています。

こうした物事をデジタル技術でサポートできれば、シニア世代のDXは十分成功したといえるでしょう。

また年を取ると視覚や聴覚などの感覚や認知能力が衰えやすいため、すでにあるものをハンディキャップのある人でも利用しやすいよう改良するのもDXの一つの形といえます。

 

シニア世代のDXの国内事例

国内におけるシニア世代向けのデジタル技術を応用した事例を、目的ごとに紹介します。

健康維持に関する事例

主に生活習慣の改善や診療の自動化など、医師や介護士だけでは手が回らない部分のサポートをDXで補う事例です。

例えば医療機関向けのITソリューションを手がけるある企業では、持病や健康状態に合わせて生活習慣の改善を提案しながら、普段の行動をログとして医者に送信して診療に役立てるシステムを開発しています。

またビッグデータを活用したソリューションを展開する別の企業では、孤立したシニア世代の方がわざわざ通院せずに気軽に自宅から健康について相談できる、AI対話型の健康相談ソリューションを提供しています。

 

コミュニケーションに関する事例

コミュニケーションを取ることで、シニア世代の心のケアや認知症などの予防につなげる役割を果たすDXの事例です。

シニア世代向けのアプリを開発しているある企業ではデジタル機器に慣れていない方でも電源をつなげればすぐに使える、テレビ電話の機能に特化したタブレット製品を手がけています。

また別の企業では、オリジナルのAIキャラクターが介護士としてふるまい毎日新たな話題やコンテンツを提供することで、シニア世代がコミュニケーションを楽しめるソリューションを展開しています。

 

生活支援に関する事例

買い物や役所での手続きなど日常生活における所用にかかる負担を、デジタル技術で軽減させるDXの事例です。

例えばIoT技術を活用したデバイスを開発するある企業では、行政の案内や健康の情報が聞けたり災害時に緊急情報を告知してくれるボタン型のデバイスを展開しています。

またEC事業関連のサービスを手がける別の企業では、地方の現地企業と連携してChatGPTを利用した生活支援ソリューションの実証実験を行っており、ユーザーがデバイスに話しかけると買い物ができる機能が実装されています。

 

まとめ

シニア世代のDXは当事者の視点で考えるのが鍵

シニア世代の中には最先端のデジタル技術や最新のデバイスに対して、どう使えばいいか分からない、何ができるのか分からないといった理由で利用していないという人も少なくありません。

しかし近年では医療面、コミュニケーション面、生活面でシニア世代をサポートするソリューションも多くみられています。

このようなDXを手がけるうえで重要なのは、シニア世代に分かりやすく概要を伝えることやシニア世代の悩みや課題に応えられるソリューションにすることが挙げられます。

そのためにはシニア世代が普段どんな生活をしているか、しっかりとペルソナを立てて当事者の考えを把握することが大切です。

 

関連リンク

[注1] 総務省「第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済」
[注2] 野村総合研究所「NRI社会情報システム、「社会のデジタル化」に対するシニア世代の意識調査を実施」
[注3] 野村総合研究所「NRI社会情報システム、「社会のデジタル化」に対するシニア世代の意識調査を実施」

 

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