APL(ART PRINT LABO)モノクロ印刷の表現拡大研究

APL(ART PRINT LABO)モノクロ印刷の表現拡大研究アート・クリエイティブ

データと経験の蓄積で拡がる表現

弊社の展覧会で展示したモノクロ印刷

美術印刷「美巧彩」ブランドを推進する当社では、自社工場の現場と連携してAPL(ART PRINT LABO)活動を行っています。

テスト印刷によるデータの蓄積をアーティストを始めとする、美術印刷を必要とするお客様へのフィードバックとモチーフに対して適正な印刷方式の推薦、表現領域の拡大を念頭にいれての活動です。

今回はモノクロ印刷へのトライアルをレポートいたします。

モノクロ印刷の可能性を追求する

モノクロ印刷の出来栄えについての討議の様子

当社が長年にわたって取り組んできたカラー高精細印刷に加え、昨今アーティストや写真家からの要望の多いモノクロプリントのクオリティを上げていくことを目標に、トライアルのテーマの討議を進めていきました。

一口にモノクロ印刷と言っても、シンプルなだけに非常にシビアなテーマになることは予想していました。

墨の色、深み、コントラストの具合など正解を探る調整が非常に難しいのです。

印刷機や用紙、印刷する画像の解像度、インキの質などが影響を与えるため、様々な要因を考慮する必要があります。

我々はどのような方向性でテストを重ねるのか。

技術やテーマ設定の会議を重ね、次第にスタッフの心意気は「究極のモノクロプリントに迫る」気持ちになっていきました。

それぞれの表現に適した技術や資材の再確認

通常のモノクロ印刷との違いを際立たせたい、明暗の階調やコントラストを明らかに際立たせたい、情感やストーリーが立ち上がる最適なインキ・用紙・技術は何かを探っていきました。

墨インキを2回重ねる、墨とクールグレー・ウォームグレーの傾向の違う2つのグレーをそれぞれ副版として重ねて表現する、通常の墨に加えて深い階調の表現できる「高濃度ブラック」インキを用いてみる、などテスト印刷と検証会議を重ねてすこしずつ方向性が見えてきました。

テスト印刷実施による気付き

アーティストの表現を意識したモノクロ印刷では、前段階にて明暗差がはっきりとするように画像の調整をすることも重要です。

作品によって、スミ1色であったりダブルトーンであったりと素材により表現の方法を選択しなければなりません。

特にダブルトーンでは階調豊かで深みのある表現が可能となりますが、画像の調整も繊細で複雑な作業になります。

テスト印刷では、人物や動物のしぐさや表情はあまり色が入らないため、墨単色パターンもしくはクール系のダブルトーンの方が伝わりやすい印象でした。

幻想的な表現やレトロ感を強調したい場合は、クール系ではなくウォーム系の方が演出効果がより発揮されました。

また、コントラストを強調したい場合は、墨単色よりも墨の2度刷り(ダブルブラック)の方が濃度感があって良いのですが、ディテールがやや潰れ気味の印象の場合もありました。

今回のAPL展では、ダブルトーンで迫力のある象の動きとレトロな印象に仕上げた機関車の写真、ブラックの強さを強調することによりハイライトがより強調され、明暗のメリハリを効かせたダブルブラックで人物の写真を印画紙のように仕上げた作品を展示しました。

マニアックなトライアルでも注目度は一番!

モチーフに合わせ、それぞれ最適の印刷方法で刷り上げたモノクロテストプリントを展示してみると、アーティストからも同業の方からも結果的に一番注目度が高い展示になりました。

ディテールや階調、レトロ感や人物の内面、画面からのストーリー性を重視した印刷方式選定。

シンプルなだけに結果がダイレクトに出る難しさが、モチーフを理解することでより良い結果となっている印象でした。

蓄積した成果の還元が課題

今回のモノクロプリントトライアルは、一般的なモノクロ印刷とは異なり、特別なインキや、中間での画像処理が必要で必ずテストプリントの工程があったりと、時間と費用が通常印刷より多く必要です。

なかなかこの知見を活かせる案件に出逢うことが難しいのですが、APLの研究活動は「いざっ!」と言う時の大事な経験となると願っています。

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東洋美術印刷:美術印刷「美巧彩」

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