社会も企業もWin-Winな「CSV経営」の特徴とメリット

社会も企業もWin-Winな「CSV経営」の特徴とメリットプロモーション

社会や環境に良いことを行う企業活動として用いられる、「CSV経営」と「CSR経営」という2つの言葉。

名前が似ているため双方がどう違うのか分からず、混ざって覚えている人も少なくないでしょう。

しかし両者には明確な違いもあるため、どちらを取るかで実際の企業の取り組み方も変わってきます。

今回はこの2つの言葉のうち「CSV経営」について詳しく紹介していきます。

CSV経営の目的は「利益性と社会性の両立」

CSVという言葉は、アメリカの経済学者マイケル・ポーター氏により提唱された概念である「共有価値の創造」(Creating Shared Value)の頭文字を略したものです。

これは企業が何らかの社会問題の改善につながる行動をとって利益を得ることで、企業と市民がそれぞれメリットを享受できる状態といえます。

例えば、ある食品メーカーがフェアトレードの農作物で作られた新商品を販売したとしましょう。

これによりメーカーの販売利益が見込めるだけでなく、農家の所得向上も期待できます。

上記のように、ただ社会や環境のためにいいことをやっているのではなく、きちんと自社の利益につなげることをするのが「CSV経営」のミソです。

近年では多くの企業がSDGsに沿ったビジョンやパーパスを定義しています。

社会や環境の保護活動としてCSV経営を実践することで、そのままSDGsの目標達成に向けた取り組みとしてアピールできます。

CSVとCSRは考え方が根本的に異なる

CSVとよく似ている単語にCSRがありますが、これは「企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)」の略なので、そもそも指している言葉が全く異なります。

CSRは企業が自らの倫理に基づいて社会貢献を行う責務を指しているため、利益を得ることが直接的な目的ではありません。

主なCSRの活動としては対外的な企業活動の説明やコンプライアンスの遵守、近年では社会・環境面でのサステナビリティ向上などが挙げられます。

CSVはもともとCSRの考え方を発展させて生まれたものなので、違う意味がありながら混同されてしまうのでしょう。

しかしCSVの取り組みは普段、企業で行っている生産・流通・販売などの一部として導入できるため、大企業のように大々的な環境保護や社会支援をやるだけの余裕がなくても取り入れやすいといえます。

CSV経営のメリット

① 企業のブランドイメージの向上

CSV経営では実際に顧客が利用する商品やサービスに社会貢献の側面を持たせられるため、企業が行っている社会的な取り組みがダイレクトに顧客に伝わりやすくなります。

特に近年ではESG投資が広まったことで、利益性だけでなく環境や社会に配慮した取り組みや適切な内部ガイダンスで企業を選ぶステークホルダーも増えました。

世界のサステナビリティ関連の投資総額は2020年時点で35.3兆ドルにも及んでおり、2016年からの4年間でおよそ2倍に増加していることからも、金融市場におけるESG投資の存在が徐々に大きくなっていることが分かります。

SNSの普及によってニュースがあっという間に拡散される現代において、企業の持つイメージが変わればその後の業績に大きな影響を与えることも少なくありません。

そういった意味においてCSV経営は、企業のブランドイメージを高めてESG投資を行うステークホルダーからの支持を集めやすくなります。

② 他業種や自治体との関係の構築

CSV経営の取り組みは一つの企業だけで完結できないことが多いため、大抵は他業種の企業や地域と協力しながら遂行します。

そのため今まで関わることのなかった会社や団体との交流が増えて、対外的な関係を築けるのもCSV経営の大きなメリットといえます。

さらに社外の方とコミュニケーションを取る中で、他社での課題解決のプロセスや地域住民の要望などCSV経営以外の新たな知見を得られる可能性も考えられます。

会社の中からは見えなかった意見や考え方が集まれば、CSV経営の取り組みにさらに応用できるだけでなく全く新しいアイディアを作ったり、新たな市場開拓のプランに役立てたりとノウハウとしてあらゆる所で役立てられます。

CSV経営の方法と事例

① 製品と市場の再認識

世の中のニーズや問題に対して自社の技術や製品がどう活かせるか考えることで、新たな需要から市場を開拓することを指します。

CSV経営の代表的な取り組みの一つであるBOP(Bottom of the Pyramid)層と呼ばれる途上国の貧困層へのサービス展開も、ビジネスを通じて現地社会の成長を促すことで将来的に自社の市場を創成させる狙いがあります。

ユニリーバでは衛生環境の悪化から多くの病人や死者が出ているインドの農村地域にて、衛生教育セミナーを開催しているほか、石鹸や衛生用品の販売事業を手掛けています。

② バリューチェーンの生産性の再定義

バリューチェーンとは、製造や販売などの企業活動がどんな付加価値を生み出しているか確認するためのフレームワークです。

サプライチェーンが供給システムの最適化に使われることが多いのに対して、バリューチェーンの目的は製品の持つ価値をできる限り高めることです。

世界的な食品メーカー・ネスレは、10年以上も前からCSV経営に取り組んでいます。

ネスレでは商品に使われている14の原材料のサプライチェーンを細かくマッピングしており、人権や動物の保護、環境の保全などに関する独自の基準を順守しているか確認する取り組みが行われています。

③ 地域社会のクラスター生成

運送や電力などのインフラ施設や研究機関など、企業の活動を支援する地域的なまとまりを産業クラスターと呼びます。

産業クラスターの代表例として工業団地や研究都市などがあります。

道路の整備や文化施設の設立など企業が自ら産業クラスターの育成に携わることで、地域の生活環境の改善や雇用の創出などに寄与できるほか自社の生産力向上などにつなげることもできます。

ネットワーク機器メーカーのシスコでは、貧困地域の住民向けにプログラミング教育を実施しています。

低所得者層の能力向上や雇用促進に貢献しながら、低コストで自社の人材になりそうなプログラマーを育成する仕組みを整えています。

まとめ

社会も自社も得をするのが「CSV経営」

CSV経営は企業活動を通じて社会問題や自然保護に取り組むという考え方なので、利益を目的としないCSR経営に比べて企業にとっては手掛けやすいといえるでしょう。

CSV経営の方法としては、自社の技術や製品がどう世の中に活用できるか考えて市場を再認識すること、企業が行うそれぞれの活動でどのような付加価値が生まれるかを把握して高めること、企業の活動を支える地域でのインフラや生活環境の改善に手助けすることが挙げられます。

長い目で見れば、自社にも大きな利益が得られる可能性があるのが「CSV経営」です。

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