ステマが違法となった今、改めて知っておきたい基礎知識

ステマが違法となった今、改めて知っておきたい基礎知識プロモーション

広告宣伝の仕事に携わっている方なら、「ステマ(ステルスマーケティング)」はよく耳にする言葉だと思いますが、理解度は人によって差があるのではないでしょうか。

ステマ-つまり広告主やその代理者が企業による宣伝と明かさずに商品・サービスを紹介する手口は、誰もがSNSで気軽に情報を発信できる世の中だからこそ流行したもの。

しかし消費者を欺いて宣伝する悪質性が問題視され、2023年10月に正式に法律で罰則化されました。

今回はステルスマーケティングの罰則化について、解説していきます。

なぜこのタイミングでステマが違法になった?

視聴者に誤解を与えてしまう広告表示は、「不当景品類及び不当表示防止法」いわゆる景品表示法で規制されています。

今回、ステルスマーケティングはこの景品表示法の第五条「不当な表示の禁止」に抵触する違反行為として罰則化されました。

ようちゃん
ようちゃん

景品表示法については、こちらの記事もご覧ください!

ステマという言葉は2012年にネット流行語大賞で金賞を取るなど、以前から世間的に認知されていましたが、薬事法や軽犯罪法以外でステマ行為を直接規制する法律は長らくありませんでした。

欧米ではすでにステマ規制の法整備が進んでいる国も多いのですが、ステマ広告と一般的なネット上の書き込みの境界を定義するのが難しいことから、日本ではなかなか規制に向けた法整備が進んでいませんでした。

しかし2022年に河野太郎氏が消費者関連を扱う特命担当大臣に就任したのをきっかけに、法改正の動きが本格化したことでステマの罰則化が施行されたのです。

ステマ規制と「インフルエンサー」の存在

X(旧Twitter)やInstagramといったSNSが普及して、誰もが情報の発信者となれる環境がステマが生まれた大きな要因といえます。

日本人のInstagramユーザー数は2019年時点で約3,300万人、X(旧Twitter)ユーザー数は2023年1月時点で約6,740万人と人口に対してSNSの利用者がかなり多いため、投稿された内容には日本中のユーザーの行動に影響を与える力があります。 [注1][注2]

もちろん商品・サービス購入時の意思決定にも同じことが言えて、ある調査ではInstagramユーザーの65%が「新商品を見つけたり調べたりするのにInstagramが役立った」と回答していることからも、SNSの潜在的な宣伝効果は高いです。

またインフルエンサーに紹介してもらうことで、CMや広告看板を展開するよりコストをおさえながら商品を大々的にアピールできます。

インフルエンサーにはグルメやファッションなど特定のジャンルを専門的に扱う方も多く、多くのフォロワーに「この人がおすすめしているならいい物なんだろう」と肯定的に認知させることができます。

このためインフルエンサーがステマに関わった事例も多く、消費者庁が著名なインフルエンサー300名に対して行った調査でも、回答者の約4割が「ステマの依頼が来たことがある」と回答しています。 [注3]

規制対象となるのはどのようなもの?

消費者庁では下記に関して、宣伝広告だと明記せずに商品サービスや企業をPRしているものをステマ広告としています。

  • SNSやレビューサイトでの投稿
  • 個人で管理しているブログやYouTube動画
  • テレビ・ラジオ番組での発言や演出

など

広告枠に掲載していない画像や投稿であっても、「PR」「※これは広告です。」といった表記が入っており、誰でもすぐに宣伝だと分かるものならステマ広告とは判断されずにすみます。

SNS上での投稿の場合も、ハッシュタグや本文の一部に「PR」や「プロモーション」といった表記があればセーフです。

掲載元であるコンテンツと一体化されたようなデザインの広告(ネイティブ広告)や、番組と同じ出演者・セットを登用しているスポンサーのCMなどコンテンツと広告の境界が曖昧なものもよく見かけますが、この場合もきちんと広告だと分かる旨の表記があればステマ広告とはなりません。

違反した場合はどういう処罰がある?

消費者庁がステマの疑いがある広告を発見した場合、広告主に広告の差し止めとともに再発防止を求める措置命令を出して広告主の事業者を公表します。

措置命令に従わなかった場合は、広告主の代表者に対して2年以下の懲役または300万円以下の罰金またはその両方が課せられます。

また広告主の企業にも責任が認められる場合は、その企業にも最大3億円の罰金を命じられる可能性があります。

2023年11月時点では処罰の対象となるのはステマ広告を発注した事業主のみで、現状では広告の作成・投稿・掲載に関わった広告代理店やSNSアカウント、雑誌出版社などには罰則はありません。

しかし当然ながらステマに関わっていることが発覚してしまうと、周囲からの信頼やブランドイメージを損なうリスクがあります。

SNSでの内部告発も珍しくなくなった今の時代、ずっとステマの事実を隠し通せる可能性は極めて低いといえるでしょう。

改正前に投稿したものも処罰対象

景品表示法によるステマ広告の規制では、改正法が施行された2023年10月1日以前に投稿されたものも罰則対象となります。

そのため現在閲覧できる自社やその製品に関する投稿に、ステマ広告と疑われる可能性があるものがないか、常日ごろから目を光らせておく必要があります。

不安ならネット広告の「ルールブック」を確認してみよう

ネット上の広告に関する様々なルールをまとめたものとして、一般社団法人日本インタラクティブ協会(JIAA)が定めた「インターネット広告掲載に関するガイドライン」があります。[注4]

このガイドラインではネット広告がステマだと疑われないためのデザインについて、下記をはじめとする規定項目の遵守を推奨しています。

  • バナー広告:広告画像は枠線を設けて親コンテンツとの境界を明確化する
  • 検索連動広告:広告文の直前に「スポンサードリンク」などの表記を入れる

また人気YouTuberが多く所属しているUUUMでは、報酬の有無にかかわらず所属タレントがSNSで商品を紹介する際は基本的に「PR」表記を入れるようガイドラインで規定されています。[注5]

もし過去にネット上で第三者に企業や商品を紹介してもらったことがある場合、投稿内容に「PR」の記載があるか必ず確認しておきましょう。

まとめ

ステマは重い罰則が課せられるリスキーな手法

2023年10月の景品表示法の改正により、ステマ広告を発注した企業や個人には懲役や罰金の罰則が生じることになりました。

近年のSNSの爆発的な普及から、影響力のあるインフルエンサーを利用したステマ広告はかつて手軽なプロモーションの手法として多く用いられていました。

しかしステマに携わっていたこともSNSで簡単にリークされてしまう可能性が高く、処罰がなくてもイメージや信頼が喪失されるリスクがあります。

JIAAが定めたガイドラインなどを参照して、自社の広告がステマだと誤解される可能性はないか一度確認しておきましょう。

関連リンク

[注1] Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破 | Metaについて
[注2] Countries with most X/Twitter users 2023 | Statista

[注3] 消費者庁「資料4 ステルスマーケティングに関する実態調査(事務局説明資料)
[注4] インターネット広告倫理綱領及び掲載基準ガイドライン – 一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会|JIAA
[注5] UUUM「広告表示ガイドライン」の改定について | UUUM株式会社(ウーム株式会社)

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