旅行業界でも広まる「マーケティングのパーソナル化」

旅行業界でも広まる「マーケティングのパーソナル化」プロモーション

コロナ禍もゆっくりですが徐々に沈静化の兆しが表れてきている今、国内外では数年ぶりにイベントが開催されるところがあるなど、本格的な観光事業の再スタートを図る動きが見られます。

実は観光・旅行業界はインターネットの広まりとともにいち早く「顧客がパーソナライズ化された」業界なんです。

今回は旅行関連の会社が行っている、パーソナライズされたマーケティングの取り組みをいくつかご紹介いたします。

旅行のスタイルが「パーソナライズ」された背景

日本人の海外旅行のスタイルは、90年代以降大きく「パーソナライズ」されてきました。

日本で海外旅行が広く普及したのは、1964年の東京オリンピックが開かれてから。

しかし海外の情報が手に入りづらかったことや、旧共産圏など気軽に入国できない国が多かったこと、現在に比べて費用をおさえにくかったことから、平成に入るまで海外旅行はハワイやフランスなどの定番の場所に大人数で行く団体旅行が主流でした。

 

平成になると、インターネットの普及や格安航空券の登場、さらに韓国や台湾など近場の旅行先が人気になったことなどから、個人や少人数での海外旅行が定着してきました。

エクスペディア・ジャパンが2018年に行った調査では、20代のときの海外旅行が個人旅行だったと答えた割合が昭和の世代では18%だったのに対して、平成の世代では35%にまで増えています。[注1]

このため旅行プランも多様化してきており、ホテルや移動手段など旅行に行きたい「リード」の需要にあわせてアプローチするマーケティング戦略が必要になりました。

 

旅行業界のパーソナライズされたマーケティングの例

① デルタ航空

アメリカを代表する航空会社の1つ、デルタ航空ではフライトに遅延や欠航が発生した場合の予約客への対応をパーソナライズ化したことで、ブランドイメージの低下を防ぐことに成功しています。

デルタ航空では空港での現地の声に加えて、SNS上での投稿をチェックすることで、予約者が会社に対して持っている不満を即座に把握して、一人ひとりの不満に合わせてアクションを取っています。

例えばサーバー障害により長時間の遅延が発生した際、Twitterで#DeltaDownというタグを載せたツイートが多く投稿されたことがあります。

 

あるユーザーはTwitterで「生まれた時からデルタ航空を愛用しているけど、5時間遅延で待たされてるのにコーヒー1杯もくれないのか」と投稿しました。

それを見たデルタ航空のスタッフは、お詫びとして個人的なメッセージとともにコーヒーショップの商品券を送りました。

ほかにも遅延のせいで娘の入学式に間に合わないといった投稿があった際、家族に向けて個人的なメッセージとともにフラワーアレンジメントを送るといった心のこもった対応をしています。

ネット上で一人ひとりの声を拾い上げることで、リピーターの喪失を防げるアクションにつながるんですね。

 

② クラブ・ファミリー・ホテル

イタリアの家族向けホテルチェーン、クラブ・ファミリー・ホテルではパーソナライズされた動画コンテンツを活用して、リードへホテルに泊まってくれるようアプローチしています。

 

クラブ・ファミリー・ホテルでは、ホテルに興味を持ってくれたリードにDMではなくリードの家族構成にあわせて内容がカスタマイズされた動画コンテンツを提供しています。

例えば1歳ほどの子供がいる家族へはベビーシッターサービスや授乳室などのオプションを、10代の子供がいる家族へはホテルリゾート内で行われるスポーツトーナメントやディナーショーなどのイベント情報を動画で紹介しています。

動画コンテンツにはコールトゥアクションの機能が組み込まれており、動画から直接ホテルの予約ページに移動できるようになっています。

 

③ エクスペディア

世界的なオンライン旅行代理店グループ、エクスペディアは自社のサイトの利用率が高いカテゴリーの客にパーソナライズしたマーケティングを行いました。

 

エクスペディアのグループにはトリバゴやホテルズドットコムなど多くの会社があります。

それぞれの会社がリードにより良いアプローチをかけられるよう、エクスペディアでは個別にユーザーリサーチをしました。

グループ会社の1つ、CheapTicketsというアメリカ国内旅行を中心とした商品を提供する旅行代理店のユーザー情報を調べてみると、学生やアメリカ軍関係者の利用が多いことが判明。

そこでCheapTicketsは彼らにフォーカスしたマーケティングを実施してリピート率の増加を狙いました。

学生に向けては、長期休暇や卒業シーズンなど学生特有のイベントに重点的に広告を展開してオファーをかけるほか、デバイスのGPSによる位置情報などからリードの属性を分析、オフシーズンで安く行ける人気観光地の観光プランを提供しています。

またアメリカ軍隊関係者の場合はユーザーリサーチにより、家族で旅行するケースが多いことがわかりました。

そこで、家族向けのミニバンのレンタルサービスやホテルや航空券の団体予約の割引キャンペーンを実施し、家族全員で何度も利用してもらえるようにしました。

 

まとめ

個人でも家族でも旅行に行く目的は人それぞれ。旅行業界ではリードの属性などの情報を集めることで、それぞれのリードにパーソナライズされたマーケティング戦術をかけられるようになりました。

その結果、リードの需要や希望にあわせた旅行プランが簡単にわかるようになるため、リードの満足度も高まりやすいです。

 

リードの好みを個別に把握したマーケティングのパーソナライズは、旅行業界に限った話ではありません。

あらゆる業界でデジタルコンテンツを駆使することで上記のようなマーケティングのパーソナライズを図っています。

日本でも面白いマーケティングのパーソナライズに関する取り組みが見られればいいですね。

 

関連リンク

[注1] エクスペディア:「昭和と平成の海外旅行を徹底比較 昭和のハワイ、平成のアジア!時代で変わった海外旅行を発表 平成世代の半数以上は10代までに海外旅行を経験」

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